感想などありましたらこちらまでどうぞ。

ジェット時代の夜明け

1939年4月26日ドイツのフリッツ・ヴェルデンがメッサーシュミットMe109R型機で時速755.138km/hの速度記録を樹立した。その時の気温を摂氏15度とすればマッハ数は0.6ほどになり、空気の圧縮性の問題が無視できないレベルになってきた。空気は圧縮されると体積も密度も変化しするので、気流の性質も変わってくる。そして揚力と抗力にも変化が生じる。機体が高速になってくるとこの問題にまっ先に直面するのがプロペラで、高速回転しながら、機体の速度で前進するので、機体の速度は音速以下でも、プロペラ先端では音速を超える事もある。ずいぶん前から、プロペラが飛行機の速度を増加させていった場合のネックになるであろう事はわかっていたけども、安易に効率の良い方式として長い間プロペラが重宝されてきた。
1910年、ルーマニアのアンリ・コアンダは50馬力のガソリン・エンジンでファンを回転させて空気を圧縮し、燃料を噴射させて高温の燃焼ガスを後方へ噴出させ、その反動を利用して推力を得るという後にエンジン・ジェットと呼ばれる方式のジェットエンジンを発明した。原理的には原始的なジェットエンジンで効率は悪いが、その年パリで開催された第2回航空サロンに出品して、「プロペラのない飛行機が出現した」という事で評判になった。しかし、1910年12月10日に地上運転の試験中に発進してしまい、慌てて上げ舵をとったら急上昇して失速墜落してしまった。コアンダは後にジェット流は曲面に沿って流れる性質があるという「コアンダ効果」を発見して有名になる。
1937年4月12日イギリスのフランク・ホイットルは世界初のターボジェット・エンジンU型のベンチテストに成功した。ドイツのハインケル社のフォン・オハインは少しだけ遅れてベンチテストに成功したが、その後の開発は順調に進み、飛行機に装着して飛行したのはホイットルのエンジンより早く、1939年8月27日にオハインのジェットエンジンHeS3b(推力380kg)を搭載したハインケルHe178はエリッヒ・ワルジッツの操縦で初飛行に成功する。その後のテスト中に時速700km/hの性能を発揮した。ホイットルのエンジンがもたつく間にイタリアのカプロニ社のカンピーニN1が、コアンダと同じようにイソッタ・フラスキーニ12気筒のレシプロ・エンジンでコンプレッサーを回転させて空気を圧縮する方式のエンジン・ジェットで1940年8月28日にマリオ・デ・ベルナルディの操縦で初飛行に成功して、2番目のジェット機となった。しかし、性能的には平凡なレシプロ機並とお粗末な結果で、翌年には計画は中止になった。ホイットルのW1型エンジン(推力385kg)を搭載したグロスターE28/39はドイツのハインケルHe178より2年も遅れ、1941年5月15日にようやくジェリー・セイヤー中尉の操縦で初飛行に成功した。エンジンを推力770kgのW2に換装して時速724km/hを記録した。

アンリ・コアンダのジェット機

ハインケルHe178

カプロニ・カンピーニN1

グロスターE28/39
inserted by FC2 system