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旅客輸送の始まり

ライト兄弟の初飛行の時の飛行機は、ようやく飛行機が飛んだというもので、パイロットも操縦席というより翼の上に腹ばいになって乗っていたので、何か実用的に使う事はまだまだ不可能なものだったが、その後、エンジンの馬力をアップしてパイロットも腰掛けて操縦できるようになり、1907年型ではパイロット以外にもう1人の同乗者を乗せる事ができるようになった。1908年5月14日、チャールズ・W・ファーナスはウィルバー・ライトの操縦するライト機に同乗して29秒間飛行し、航空史上初めてパイロット以外で飛行機に乗った乗客として名前を残す事になった。アンリ・ファルマンは1910年3月5日に3人の乗客を乗せて1時間2分の飛行をしているが、吹きさらしのオープン座席に乗せて飛ぶ飛行機はまだまだ交通機関としての地位は確立されていなかった。一方、ツェッペリン飛行船はガラス張りのゆったりした客室に20〜25人の乗客を乗せる事ができ、飛行機とは比べものにならなかった。ドイツのDELAGにより1910年6月22日から1914年7月31日までの間に1,588回の飛行を行ない、「ビクトリア・ルイゼ」「ハンザ」「ザクセン」の3隻の飛行船が大活躍をした。
飛行機による定期旅客輸送は1914年1月1日、アメリカのフロリダ州タンパでベノイスト14型飛行艇により、トニー・ジェーナスがタンパ〜セントピータースバーク間30kmのコースで開始した。1日2便、体重91kgまでは1人5ドルという高額の料金にもかかわらず、陸路で60kmの道のりが20分で行けるというのでそれなりに繁盛して4ヶ月間で1,205人以上の乗客を運び、欠航はわずか18便という素晴らしい成績だったが、1度に1人しか運べないので、採算がとれず中止する羽目になってしまった。
第1次世界大戦が始ると、旅客輸送を行なうまでの余裕はなかったが、いくつかの公式な郵便物の輸送などでが行なわれたりした。1917年5月20日〜22日イタリアでポミリオPC1型偵察機によりローマ〜トリノ間で往復郵便飛行が行なわれて、その時、世界最初の公式航空郵便切手が発行された。1918年3月20日からは、オーストリア空軍のハンザブランデンブルクC1型偵察機を使用してオーストリアの首都ウィーンからウクライナ共和国の首都キエフまで世界初の国際郵便飛行が定期的に行なわれた。しかし、このような飛行はほとんどが軍用機を利用したもので、本格的な航空輸送を開始するには専用の飛行機が必要になってくる。しかも旅客輸送をする場合はガラス窓つきの密閉した客室を持つ飛行機が必要になってくる。ライト兄弟が飛行してから、第1次世界大戦の間に飛行機の性能は格段に進歩してきて、乗客を乗せて遠くまで早く飛ぶという可能性がでてきた。
戦争が終わって、旅客輸送を最初に開始したのは意外にも敗戦国のドイツで、DLRが1919年2月5日にベルリン〜ワイマール間190kmの路線で定期的な運航を開始した。しかし、使用した飛行機はAEG複葉偵察機の後部銃座を改造して密閉式の2人乗りキャビンにした簡易改造機だった。1919年8月25日パリ〜ロンドン間の路線に就航した飛行機もデハビランドDH4A複座偵察機を改造して2人乗りキャビンを付けたもので、まだ旅客輸送専門の飛行機ではなかった。当時、戦争が終わって不要になった飛行機があふれていた事もあって、そうゆう飛行機が盛んに改造されて利用された。
そんな中、旅客専門の飛行機も誕生する。初期の旅客輸送の飛行機の中で、代表的なのはフランスのファルマン・ゴリアート、オランダのフォッカーF2、ドイツのユンカースF13などがある。ファルマン・ゴリアートは大戦中開発された爆撃機改造の全木製複葉の旧式な機体ながら、双発の機体で、本格的な客室を12席配置してていた。フォッカーF2は木製合板張り主翼に鋼管溶接羽布張り胴体で、高翼配置の片持式という先進的な構造だった。ユンカースF13は世界で始めての全金属製構造で、低翼単葉片持式という当時としては画期的な機体で、耐久性も抜群で、世界中で広く使われ、初期のベストセラー機になった。
初期の旅客輸送ではユンカースF13やフォッカーF2などの単発機が主流で、運賃も高く、まだまだ需要も少なかったので、4〜5人乗りの単発機で充分間に合った事もあり、整備が簡単で小回りが効く簡便さが買われ、よく使われた。しかし、今日ではエンジンの故障などに対処する為、単発の飛行機は少ない。当時、双発機が盛んに使われなかったのは、プロペラがまだ固定ピッチプロペラで、もし、エンジン停止の場合は、風車のように風でプロペラが回転してしまい、逆に抵抗が増してしまうという欠点があった事もある。双発機の場合はエンジン停止の場合、抵抗をなくすようにフル・フェザーが可能なプロペラの開発が必要であった。

デハビランドDH4A改造機

ファルマン・ゴリアート

フォッカーF.2

ユンカースF13
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